オリエンタルランド、強気の値上げと“猛暑の現実”──2026年3月期1Q決算を読む

関東私鉄

2025年4〜6月期のオリエンタルランド(OLC)の決算は、**売上高1,637億円(前年同期比+10.3%)、営業利益387億円(同+16.3%)**と、過去最高の第1四半期となりました。主因は、テーマパークの単価引き上げとホテル部門の好調です。

しかし、あまりにも強気な単価政策と、連日の猛暑に対応しきれない運営体制には、懸念も浮かび上がります。


単価上昇が支えた増収──入園者数は“横ばい”

入園者数は前年同期と「ほぼ同様」とされており、実質的な増収要因はゲスト1人あたり売上高の上昇です。

  • プレミアアクセス(優先入場パス)価格帯は最大2,500円まで拡大し、対象アトラクションも急増。
  • 飲食や物販でも価格が上昇。ホテルでは平均客室単価が前年比17.5%増の66,534円に跳ね上がりました。

このような状況は、「インバウンド向けの高単価戦略」と見れば合理的ですが、一方で**国内ファミリー層の“価格離れ”**を加速させるリスクも孕んでいます。


「ファンタジースプリングス」通期稼働の恩恵と、その陰で

東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」がフル稼働した初の四半期。これが収益を押し上げた点は否定できません。

しかし、スペース・マウンテンのクローズや、週末の雨天増による集客減もあり、収益増はほぼ単価効果のみである点が気になります。

また、ハードの刷新は進んでも、ゲスト体験に直結するソフト面(接客や動線、冷房設備など)での投資効果が見えづらいのも事実です。


猛暑対策は“イベント名”だけ?

2025年夏、日本列島は異常な猛暑に見舞われ、テーマパーク運営にとっては過酷な環境となりました。

OLC側も7月2日から「サマー・クールオフ」という夏イベントを展開しましたが、その実態はミストや濡れ系ショーの演出中心。パーク全体としての“暑さ対策”は限定的です。

  • 日陰や休憩所の拡充
  • 無料の水提供の拡大
  • 高齢者・子ども向け避暑対応

といったインフラ投資が求められる局面にも関わらず、そこに本格的な手が打たれた様子は見えません。


ホテル事業の好調も「価格ドリブン」

ホテル事業は、営業利益が前年同期比**+112.2%の91億円**と大幅増。ただし、**平均客室単価が約1万円上昇(+17.5%)**している一方で、**稼働率は微減(94.2%→94.0%)**という状況です。

これは、一部の富裕層を中心に高単価需要が取り込めている反面、価格に敏感な層の取り込みが鈍っている兆候とも解釈できます。


まとめ:持続可能な成長か、価格頼みの“過熱”か

オリエンタルランドの第1四半期決算は、数字だけ見れば非常に好調です。しかし中身をよく見ると、**「単価頼み」「価格上昇」「夏対策の薄さ」**という気になる傾向が浮かびます。

今後の焦点は以下の3点です。

  1. 国内ゲストの“価格離れ”をどう防ぐか
  2. 猛暑を織り込んだ施設運営・投資ができるか
  3. ファンタジースプリングス以外の成長ドライバーをどう育てるか

持続的な成長には、「単価」ではなく「体験価値」をベースとした戦略が今こそ問われています。

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