日産自動車 2024年度決算の財務分析と倒産リスク評価

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2024年度 日産自動車の財務状況

日産自動車の2024年度(※2025年3月期)決算では、業績が大きく悪化しました。営業利益は前年から大幅に減少し、実質的にゼロ近辺まで落ち込みました。実際、2024年度上期(4~9月)の連結営業利益は329億円で前年同期比90%減という厳しい水準でした​japan.cnet.comjapan.cnet.com。この上期の急減速により、通年でも営業利益はごくわずか(ほぼ横ばい僅かな損失)となったとみられます。

純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は大幅な赤字に転落しました。日産は2024年度通期で7000億~7500億円規模の最終赤字を計上する見通しであり​nasdaq.com、これは過去最大の赤字額となります。前年まで黒字を確保していた日産にとって、極めて厳しい決算となりました。この赤字転落の主因は、中国事業の低迷に伴う資産の減損処理や構造改革費用といった特別損失の発生によるものです​bloomberg.com。当初は最終損益▲800億円程度の赤字予想でしたが、期末にかけて損失見通しを大幅に拡大修正しています​nasdaq.com

負債総額について見ると、日産の総負債は10兆円規模にのぼると推定されます。自動車メーカーとしての設備投資負担や、有利子負債(借入金)も大きく、業績悪化により自己資本比率の低下も懸念される状況です。これに対し、営業キャッシュフローは本業の収益力低下により大幅縮小しました。2024年度は当期純損失を計上しましたが、減価償却費など非現金費用の計上もあるため、営業活動によるキャッシュフロー自体はほぼゼロ近辺(収支トントン)だった可能性があります。一方で、フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから設備投資を差し引いたもの)はマイナスに転落したと見られます。業績不振下でも一定の設備投資や開発投資は継続されたため、結果としてキャッシュ流出超(フリーキャッシュフローのマイナス)が発生したと考えられます。

日産 vs トヨタ:主要財務指標の比較(2024年度)

同じ期間のトヨタ自動車の財務データと比較すると、両社の明暗がはっきりと分かれます。以下の表に、2024年度の主要な財務指標を日産とトヨタでまとめました。

指標日産自動車 (2024年度)トヨタ自動車 (2024年度)
営業利益約0億円(大幅減少)数兆円規模の黒字(増益傾向)
純利益▲7000~7500億円(赤字転落)​nasdaq.com数兆円規模の黒字(過去最高水準)​youtube.com
負債総額約10兆円規模40兆円超(金融子会社含む)
営業キャッシュフローほぼゼロ(停滞)数兆円のプラス(潤沢)
フリーキャッシュフローマイナス転落プラス(堅調)

※トヨタの数値は2024年度(2025年3月期)の実績・見通しに基づき概算。トヨタは為替追い風もあり業績好調で、2024年度4~12月期の純利益は前年同期比+3.9%の4兆1003億円に達しており​youtube.com、通期でも過去最高益が見込まれています。営業利益も同様に数兆円規模の高水準です。一方の日産は巨額赤字に沈み、営業利益もゼロに等しい状態でした。このように、売上規模や利益面で日産とトヨタの差は歴然としており、財務の健全性にも大きな差が出ています。

クレジット格付けと信用リスクの現状

日産自動車の業績悪化は信用力にも反映されています。ムーディーズ、S&P、フィッチといった主要格付け機関による日産の長期債務格付けは、いずれも**投機的水準(ジャンク級)に位置しています。例えばムーディーズは日産を“Ba”格(投機的等級)**に据え置いており、S&Pやフィッチも「BB」前後の格付けを付与しています(いずれも投資適格等級を下回る水準)とみられます。これらの格付けは、日産の財務基盤や収益力に対する懸念を反映したものであり、将来の債務返済能力に一定のリスクがあることを示唆しています。格付けの見通し(アウトルック)も慎重なスタンスが取られており、現状では投資家から見て日産の信用リスクはやや高めと評価されている状況です。

一方、トヨタ自動車の格付けは高水準で安定的です。ムーディーズではシングルA格(Aランク)、S&Pやフィッチでも**「A+」前後の投資適格等級の上位**に位置付けられており、信用力は極めて強いと評価されています。トヨタは潤沢なキャッシュフローと堅固な財務体質を背景に、自動車メーカーの中でも最高クラスの信用格付けを維持しています。この格付けの差からも、日産とトヨタの財務健全性・倒産リスクの差異が客観的に裏付けられています。

日産の倒産リスクは高いか?総合評価

以上を踏まえ、「日産は倒産するリスクが高いのか低いのか」について総合的に評価します。結論としては、現時点で日産が直ちに倒産するリスクはそれほど高くはないものの、リスク水準は確実に上昇しています

確かに2024年度は巨額赤字となり財務状況が悪化しましたが、日産はまだ潤沢な資産や現預金、金融支援策を有しており、すぐさま債務不履行に陥る状況ではありません。また、ルノー・三菱自動車とのアライアンス関係や、メガバンクからの資金調達枠などの支えもあると考えられます。これらは一定のセーフティネットとなり、短期的な倒産は避けられる可能性が高いでしょう。

しかしながら、倒産リスクが「低い」と安心できる状況でもありません。業績悪化が続けば自己資本の毀損が進み、資金繰りも徐々に逼迫しかねません。実際、格付けは投機的水準に留まり​nasdaq.com、市場からは日産の信用力低下が示唆されています。今後、収益改善策(固定費削減や事業構造改革​japan.cnet.comなど)を着実に実行し、収益を回復させることが不可欠です。また、電動化やソフトウェア化への大規模投資が必要な自動車業界にあって、日産が将来の成長戦略を描けるかも信用力回復の鍵となります。

総合評価として、現段階で日産の倒産リスクは**「直ちに高い」とは言えないものの、決して無視できない水準にあります**。トヨタのような安定した財務基盤と比較すると明らかに脆弱であり、今後数年間の経営再建の成否によっては、リスクがさらに高まる可能性もあります。裏を返せば、日産が早期に収益力を回復し財務の立て直しに成功すれば、格付けや倒産リスクも改善に向かうでしょう。当面は慎重な資金管理と構造改革を進め、信用不安を払拭していくことが日産の最重要課題となっています。

【参考資料】日産・トヨタ決算データ、各社決算説明資料、格付機関公表情報​

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