三菱商事の“トンズラ”発表
8月27日、三菱商事は洋上風力発電事業からの撤退を発表しました。4年前、国が初めて実施した洋上風力の公募入札で、三菱商事は格安のダンピング価格で3海域を総取り。しかしその後、採算が大幅に悪化し、撤退を余儀なくされました。
結果的に、期待された日本の再生可能エネルギーの切り札は頓挫し、国全体の再エネ計画にも暗雲が漂っています。
なぜ撤退に追い込まれたのか
三菱商事が格安入札に踏み切った背景には、再エネ拡大を推し進めたい政府の強い意向と、それに呼応した「とにかく安い電力価格」を求める入札方式がありました。しかし現実には、
- ウクライナ戦争以降の資材価格高騰
- 世界的なインフレ
- 為替の円安進行
- 建設費・人件費の上昇
といった逆風が重なり、当初の採算計画は崩壊。3割以上のコスト超過が発生し、とても事業を継続できる状況ではなくなったのです。
誰が責任を負うべきか
今回の撤退劇は、三菱商事だけでなく国の政策判断の誤りも浮き彫りにしています。安さを最優先した入札制度は持続可能性を欠き、国民負担の増大に直結しました。今後は電気代や再エネ賦課金の上昇に跳ね返る可能性が高く、「結局ツケを払うのは国民」という構図が懸念されます。
記事では「犯人は三菱商事かもしれないが、真犯人は制度設計を誤った政府だ」と指摘しています。安さに飛びつき、長期的な視点を欠いた政策が国益を損なったのです。
日本の再エネ計画の行方
欧州では巨大な洋上風力発電所が次々と稼働し、エネルギー自立や脱炭素の柱となっています。それに比べて日本は、まだ緒に就いたばかり。三菱商事の撤退で**「日本の洋上風力は本当に実現できるのか」**という疑念が強まっています。
エネルギー安全保障やカーボンニュートラルを掲げる日本にとって、再エネは避けて通れない課題です。にもかかわらず、拙速な入札設計と企業の採算悪化で頓挫した今回のケースは、将来への大きな警鐘となりました。
まとめ
三菱商事の撤退は、一企業の失敗にとどまりません。
- 日本の再エネ政策の設計ミス
- ダンピングを許した入札制度の欠陥
- 国民負担増への懸念
これらが一体となって、日本のエネルギー政策の脆さを露呈しました。再エネ拡大は重要ですが、「安さ競争」ではなく、持続可能性と実現可能性を重視する政策転換が求められています。
今回の教訓を無駄にせず、日本のエネルギーの未来をどう描くのか――それがいま問われています。
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