地銀の勘定系システムの動向

地銀

勘定系システムに関するニュースでいうと、みずほ銀行が度重なるシステム障害が挙げられるだろう。システム障害を起こしたことで、社長が謝罪する姿を何度もメディアで報道され、利用者からの信頼を失ってきたことをみると、勘定系システムは銀行経営にとって重大なシステムであることが容易に想像できる。

また最近では広島銀行がふくおかフィナンシャルグループとの基幹系システム共同化の枠組みである「Flight(フライト)21」から離脱し、横浜銀行などが参画する「MEJAR(メジャー)」に乗り換える方針であることが報道されている。Flight21は日本IBM、MEJARはNTTデータがそれぞれ支援しており、広島銀行はIBM陣営から抜け、NTTデータ陣営に新たに加わることになる。ここでは、主に地銀の勘定系システムの動向をみていく。

勘定系システムとは

金融機関のシステムは多数あるが、預金・融資・為替等の主要業務を処理するシステムを「勘定系システム」という。

また、証券業務に関する取引支援等を行う「証券系システム」、外国為替業務 の事務処理等を行う「国際系システム」、外部の金融ネットワークや顧客システム等と接続する「対外系システム」、営業店端末機や ATM 等の処理を行う「営業店システム」、これら金融機関の業務をサポートする「情報系システム」などに大別される。

次にシステム共同化の現状について紹介する。

NTT データの運営する共同システム

NTT データは 2004 年に京都銀行向けに共同システムのパッケージソフトである BeSTA9 を NTT データ地銀共同センターにおいて運営して以来、 BeSTA ベースの共同システムという形をとりながら、順調に加盟行を増やしてきている。

地銀共同センターに加盟する地域銀行を増やす一方、BeSTA をベースとしたシステムとして 2010 年に MEJAR を、2011年に STELLA CUBE10を、2014 年にBeSTAcloudを稼働させている。

また、2005 年には日立製作所は勘定系パッケージソフトである BeSTA を利用した NEXTBASE11を稼働させている。

日本 IBM が運用する共同システム

日本 IBM についても、地域銀行におけるシェアは約4分の1となっており、NTT データに次いで、共同システムに加盟する地域銀行数は順調に増えている。 日本 IBM の提供する例として、じゅうだん会の場合、中核銀行(八十二銀行)が自行用のためにシステムを開発し、そのシ ステムの使用権を日本 IBM に許諾し、加盟する銀行は日本 IBM にカスタマイズ開発 と運用を委託するタイプとなっている。

日本ユニシスが運用する共同システム

 NTT データ、日本 IBM に次いで、日本ユニシスが 3 番目のシェアとなっている。 地域銀行の場合、1 つの共同システム(Bank Vision)ではあるものの、2010 年、2017 年、2021 年とも 9 行が採用している。

グループにする狙い

  • システム開発経費の削減効果

勘定系システムを初めとする金融機関のシステムについては各行・金融機関によっ てカスタマイズされる部分はあるものの、もともと1つの銀行・金融機関が負担していた開発・運営コストを複数の銀行・金融機関が分け合う形になるため、その経費は削減される。

  • マネー・ローンダリング対策など金融制度変更への確実な対応

近年の金融環境の激変に合わせて、金融制度も短期間で変更されており、その内容も 複雑化している。最近では、Fintech分野での新商品開発などの情報連携のほか、例えば 2015 年に発足 し、2020 年に共同出資会社を設立した TSUBASA アライアンスでは、マネーローンダリング対策などのコンプライアンス分野において共同システムの枠を超えた広域連携を図っている

今後の動向

  • 金融機関システム等のクラウド化・オープン化への対応

共同システムのサーバーをクラウド化する動きがみられる。そもそもシステム共同化は、金融機関外のサーバーを利用するものであり、中には、複数の加盟行が同一サーバー内のアプリケーション、データベースなどを共有するマルチテナント型まである。

さらには、北國銀行では2020年にIT基盤システムのクラウド化を始めており、金融機関のシステムについては、今後、ますますクラウド化の波が押し寄せるものと考えられる。

しかし、クラウド化の進展に当たっては、預金データなどの金融情報は機微(センシ ティブ)情報に当たるため、個人情報保護の観点からもサーバーの設置場所については 国内に限定するなどの規制が必要である。

まとめ

Fintech銀行における勘定系システムは変貌すると予想されることから、銀行員おいても、システム動向を注視する必要があるだろう。

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