みんなの銀行はネットバンクと何が違うのか

ネット銀行、フィンテック

ふくおかフィナンシャルグループ(FG)は2021年5月に、デジタル専業「みんなの銀行」のサービスを開始した。クラウドベースでゼロから銀行を立ち上げ、「国内初のデジタルバンク」を標榜している。欧州では大手の伝統的な銀行がデジタルバンクを立ち上げる動きが活発になっている。みんなの銀行の挑戦は国内銀行のデジタル化を占う試金石になっている。

サービス一覧

  • ウォレット(普通預金)

普通預金を「ウォレット」と呼んでいる。

 お財布感覚で、「使っていいお金」をここに入れ、キャッシュカードや現金を持ち歩くことなく、お支払いから、振込み、ATM入出金まで、いつでもどこでもスマートフォンオンリーで利用することができるということで、キャッシュカードがないというのが珍しい。

ただ、住信SBIネット銀行やPayPay銀行、セブン銀行等においても、キャッシュカードなしでコンビニATMで現金の引き出しができるため、他のネットバンクとの違いはあまりない。

  • ボックス(貯蓄預金)

みんなの銀行では、貯蓄預金の中に仮想の「ボックス」を作ることができる。あなたのお金を簡単に整理・整頓することができる「箱」のイメージで、様々な目的に応じて、シュッと簡単にお金を仕分けることができる。

例えば、旅行用に貯蓄するために1つのボックスを作成し、そこにお金を仕分けるといったイメージのようだ。

また、貯蓄預金金利は今まで0.001%と従来の銀行と同水準であったが、現行では0.03%となっている。ただ、他のネットバンクの水準感と比べると高いとは言えない。

  • デビットカード

みんなの銀行デビットカードはスマートフォンで使えるバーチャルデビットカードで、使ったその場で口座から即時引落。口座にある残高の範囲でご利用が可能で、利用限度額も設定できるので安心してご利用できる。年会費無料で、すぐに使える。

一方、デビットカードについても、どこの銀行でも利用できる商品である。

  • レコード

レコードは、日々のお金の出入りを振り返るサービスである。みんなの銀行以外にも、お持ちの銀行口座やクレジットカードなどを連携して、残高や明細をまとめて確認することができる。

何にたくさんお金を使っているか、どれくらい貯蓄にまわせているかなど、自分のお金の動きを振り返ることができる。

取引履歴の確認についても、どこの銀行のネットバンク機能で確認できるし、マネーフォワードなどの家計簿アプリもあるわけで、特段変わった機能ではない。

  • カバー

カバーをあらかじめ契約していれば、急な出費や支払があっても最大5万円まで自動で立替えができる。ピンチの時に助けてもらえる。カバーは通常のカードローンとは異なるサービスなので利息は発生しない。利息が発生しないというのは珍しいが、銀行収益を圧迫するのではないかと考えてしまう。

  • ローン

申込みから借入れ返済まで、すべてアプリで完結する。ご年収のみの入力で簡単審査とのことだが、消費者金融も同様だろう。年金利も1.5%~14.5%、借入金額最大1000万円とほかの金融機関との差はない。

ネットバンクと何が違うのか

サービス一覧をみるとネットバンクや従来の金融機関と大きな違いはないことがわかる。みんなの銀行ではデジタルネイティブ世代と呼ばれる若年層の顧客獲得を狙っている。ユーザーの属性としては約7割が10,20、30代の顧客のようだ。

また、みんなの銀行のアプリをさわってみると、ユーザーエクスペリエンスの高さが感じられる。一言で言うと、何かかっこいいのだ。そのかっこいいことを顧客が体験し、共有することができる点がネットバンクとの大きな違いだろう。

また、他のネットバンクは既存の銀行をインターネット化した、というイメージであるが、みんなの銀行はゼロベースでシステムの開発などが行われているため、何か新たな機能を追加するなどの施策を打つ際のスピード感が早いといわれている。

決算動向

みんなの銀行の2022年3月末の貸借対照表を見ると、預金残高が58億円、資産の部の多くはコールローンと有価証券で、貸出はほとんどない。また損益計算書をみると、35億円の当期純損益、要は赤字である。

次に2022年9月の中間決算をみると、預金残高が176億円、資産の部についてgは引き続き多くはコールローンと有価証券で、貸出はほとんどない。預金は凄まじいスピードで拡大していることがわかるが、うまく運用できているわけではない。

また損益計算書をみると、17億円の中間純損益で、前期とほぼ同じ損失水準だ。

まとめ

地方に地盤を置く地方銀行にとって、昨今の地方の急速な人口減少は非常に悩ましい問題であり、地域で区分けを行ってきた従来のビジネスモデルが成り立たなくなる可能性が高まってきている。母体となったふくおかフィナンシャルグループは周辺地方銀行との経営統合にて、規模を拡大し、問題に対処してきた。

みんなの銀行の設立により、九州地域以外の顧客、しかも若い顧客を獲得することができ、みんなの銀行で得られたノウハウを基に新たな銀行の将来像をグループ全体で追求するとしているのではないかと考える。

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