「“夢の国”に溺れた鉄道会社 ― 京成電鉄が見失った資本の使い道」

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1. 京成電鉄が抱える“1兆円超”の見えない資産

京成電鉄は、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(OLC)の株式を21%も保有しており、その評価額は約1兆600億円に達します。しかし、会計上は関連会社として扱われ、財務諸表上の評価額は約2,000億円に留まっています。この「帳簿と実態の乖離」が、経営の意思決定を歪め、真の企業価値を見えにくくしています。


2. 見せかけのPBRと東証からの警告

京成電鉄のPBR(株価純資産倍率)は2.0倍とされていますが、OLC株式の評価を除くと実質的なPBRは0.7倍に過ぎません。これは同業他社平均の1.1倍を大きく下回っています。東京証券取引所は、PBR1倍割れ企業に対して資本コストを意識した経営改革を促しており、京成電鉄の対応が注目されています。


3. 巨大な“価値のギャップ”と眠る資本

京成電鉄の時価総額は約9,200億円ですが、OLC株の真価を加味した本源的企業価値は約1兆3,400億円とされ、約4,200億円の価値のギャップが存在します。これは、非中核資産であるOLC株の整理を怠り、資本配分政策を明確にしないことによる結果です。


4. 利用者は知っている ― 不満とギャップ

2024年の調査によれば、京成電鉄の利用者の32.7%が「運賃が高すぎる」と回答し、30.5%が「駅や周辺施設が古い・充実していない」と感じています。また、83.2%が「OLC株保有を知っていた」と答えており、多くの市民が「OLC株を保有する余裕があるのなら、鉄道サービスに還元すべき」と考えています。


5. 具体的に可能な“地域再投資”とは

パリサー・キャピタルが提案する再投資メニューには、以下のような施策が含まれます:

投資項目必要資金(概算)効果・目的
北総線の運賃引下げ約100億円高額とされる運賃の改善
成田空港アクセスの複線化約600億円輸送力向上と混雑緩和
京成高砂駅の再整備約400億円接続駅のボトルネック解消
スカイライナー増発と新車導入約250億円空港特急の価値強化
駅のバリアフリー化・ホームドア整備約120億円高齢化対応と安全性向上

これらは、株式を売却して得た資本を公共性の高い再投資に充てるという、理にかなった道筋です。


6. 拒否され続ける株主の声

株主であるパリサー・キャピタルは、OLC株を15%未満に削減し、資本配分計画を公表すべきという提案を行いましたが、京成電鉄はこれを拒否しました。これは、株主に対する説明責任の欠如であり、ガバナンスの形骸化を物語っています。


7. イオンとの資本業務提携 ― 時代錯誤の“持ち合い”回帰

2024年10月31日、京成電鉄はイオンと資本業務提携を発表し、相互に株式を保有する関係を築きました。これは「安定株主の確保」を目的としたものであり、経営陣の交代圧力が働きにくくなるなど、ガバナンスの独立性を阻害する要因となります。

関連資料:


8. おわりに ― 地域と向き合う資本戦略を

鉄道会社は夢を運ぶ存在かもしれませんが、それは「現実の地域生活を支える交通」あっての話です。京成電鉄は、ディズニーリゾートの株式を抱えて陶酔するのではなく、資本の使い道を明確にし、沿線や顧客に対して“現実の還元”を行うべき時期にあります。

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