はじめに:テーマパーク新時代に挑む「ジャングリア」
沖縄県本部町に、2025年開業予定の大型テーマパーク「ジャングリア(JUNGLIA)」が注目を集めている。手がけるのはUSJ再建の立役者であり、マーケティング戦略の第一人者・森岡毅氏率いる株式会社刀。彼の手腕がまたもや試される一大プロジェクトだが、その前途には期待とともに多くのリスクも横たわる。
1. ジャングリアのビジョンと森岡毅の参画
「自然×冒険×体験」をテーマに、約60ヘクタールの広大な土地に構想されるジャングリアは、サファリ型の体験施設やアスレチックを組み合わせた“没入型アドベンチャーパーク”。この構想を旗振り役として牽引するのが、元P&G出身のマーケターにしてUSJ復活の仕掛け人・森岡毅氏だ。
彼は以下の実績で知られている:
- USJを「経営危機」から「V字回復」へ導いた立役者(2010年代初頭、ハリーポッター導入など)
- 刀を創業し、丸亀製麺や西武園ゆうえんちの再生にも関与
- 「戦略は感情から始まる」という信念で“熱狂”をつくるマーケティングを実行
その彼が“沖縄から世界へ”という野心をもって挑むジャングリアだが、成功を疑わないわけにはいかない理由がいくつかある。
2. 森岡流マーケティングが通じにくい地理的・構造的制約
(1) 沖縄という立地の壁
- 那覇空港から車で2時間、公共交通手段は未整備
- 国内観光客にとっては「気軽に日帰りで行ける場所」ではない
- 沖縄旅行に行く層はリゾート・海を目当てが多く、テーマパーク目的の動機づけが難しい
→ USJは「大阪」という集客力のある都市圏が後ろ盾にあったが、ジャングリアは“目的地”自体を創出しなければならない
(2) ブランドIPの不在
- USJ復活の要因はハリーポッター、ミニオン、マリオなど強力な知的財産との連携
- ジャングリアは自然体験を前面に出すが、SNS映えや感情喚起の面で**「物語性の薄さ」が課題**
→ 森岡氏の「感情戦略」が今回、既存のIPに頼らず通用するのかが試されている
3. 森岡ブランドへの期待:西武園ゆうえんちとの共通点と違い
西武園ゆうえんちでも、昭和の世界観で「没入感」をつくり出すマーケティングを仕掛け、開業初年度の売上は前年比300%超となったが、リピート率や持続性には課題も残る。
- ジャングリアも「初動の話題性」は演出できるだろうが、年間通じて持続的に人を呼べるか?
- 沖縄という気候変動の大きい場所で、台風やオフシーズンをどう乗り切るか
4. それでも成功の芽はある:観光需要とアジア戦略
(1) インバウンド需要の取り込み
- 台湾・韓国・香港などからの沖縄観光は回復傾向
- LCCと連携したパッケージ化、英語・中国語対応の体験強化などで訪日客を主軸にできる
(2) 地元経済との共生
- 雇用創出や周辺宿泊施設との相乗効果によって、「沖縄経済の目玉事業」として位置づける戦略
- ただし、過去にリゾート開発で失敗した「カヌチャリゾート」などの前例もあるため慎重な運営が必要
USJ・ディズニーと比較して何が違う?
項目 | ジャングリア | USJ | 東京ディズニーリゾート |
---|---|---|---|
所在地 | 沖縄県本部町 | 大阪市此花区 | 千葉県浦安市 |
アクセス | 車必須・不便 | JR直結 | JR+シャトルバス |
メイン層 | 自然体験目的の訪日客 | 国内外の映画ファン | 家族・カップル |
強み | サファリ・アクティビティ | IPコンテンツ(マリオ等) | 世界観・徹底演出 |
弱み | 知名度・IPなし | 天候・混雑 | 高価格・混雑 |
おわりに:森岡毅の“真価”が問われる
「ジャングリア」は、日本のテーマパーク史における“第3の革命”となり得るかもしれない。しかし、それはUSJの二番煎じではなく、沖縄という“未知の土壌”に新たな常識を根付かせる挑戦である。
森岡毅という名将が率いるこの一手が、沖縄の未来と日本の観光産業にどのような影響を及ぼすか、注視したい。
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