コンテナ船市況 ― 関税の直撃
海運業界の最大リスクはやはり米国の関税政策です。
米中暫定合意で一時的に北米向け運賃は急騰しましたが、供給増であっという間に反落。アジア発米国向け荷動きも4月以降減少に転じ、秋以降は前年比▲2割減が見込まれています。
統合コンテナ船会社 ONE も1Q利益が前年同期比▲89%と急減し、通期計画も引き下げ。関税が荷動きと運賃に直撃している構図です。
自動車船 ― 関税下でも堅調
一方、自動車船は意外な強さを見せています。
米国向け輸出台数は関税25%を企業が負担しつつも増加。世界全体でもプラス成長を維持し、長期契約に基づく固定運賃が利益を支えています。
もっとも10月以降導入予定の米国港湾入港料制度は新たなリスク。対象となる中国建造船や外国製自動車船には課徴金が科され、運賃転嫁が不可避となる可能性があります。
邦船3社への影響 ― 想定より縮小も、依然リスク大
日本郵船・商船三井・川崎汽船の3社は、2025年度利益計画において関税影響を次の通り見込んでいます。
- 日本郵船:▲240億円
- 商船三井:▲200億円
- 川崎汽船:▲180億円
期初には「郵船▲1,000億円リスク」などと見積もっていたため、縮小はしていますが、最大の痛手はコンテナ船事業。ONEの利益下方修正が直撃する格好で、依存度の高さが露呈しています。
財務体力と下方耐性
もっとも、21~22年度の「運賃バブル」で稼いだ巨額キャッシュのおかげで財務基盤は盤石。自己資本は合算で約6.9兆円、D/Eレシオ0.5と健全水準を維持。LNG船や自動車船の長期契約もあり、収益の下方耐性は確保されています。
しかし、株主にとっては「関税一つでコンテナ船収益が吹き飛ぶ脆弱さ」が改めて浮き彫りになったといえるでしょう。
結論 ― 安定と不安定の同居
- 安定要素:自動車船・エネルギー船の長期契約、強固な財務体力
- 不安定要素:関税に翻弄されるコンテナ市況、米国港湾制度という新リスク
海運大手は「安定的」との格付けを得ながらも、実態は米国の関税政策次第で利益が大きく揺れる産業です。投資家にとっては、「安定」の裏に潜む政策リスクを直視する必要があります。
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