市場規模の現状
日本のホームセンター業界の市場規模は、2023年度に約4兆21億円となり、前年度比で377億円減少しました。これは2020年度のコロナ禍による特需で市場が急拡大して4兆円を突破した後、3年連続で縮小したことを意味します。
巣ごもり需要の反動に加え、近年のコストプッシュ型インフレ(原材料費・エネルギー費・物流費の高騰)や円安による物価上昇が響き、住関連支出が落ち込みました。既存店ベースでは来店客数の減少が続き、業界全体の売上に打撃を与えています。
一方で客単価は物価上昇の影響で数%伸びており、新規出店による売上増に頼る構図が鮮明になっています。大手と中堅以下の格差も広がっており、上位10社で市場の7割超を占める寡占状況となっています。今後は人口減少を見据え、業界再編(M&A)が加速する可能性も指摘されています。
主要企業の経営戦略
カインズ
業界最大手。プライベートブランド(PB)商品開発とデザイン性で差別化を図り、さらに他社への商品供給など業界横断型の協業も進めています。デジタル戦略にも積極的で、アプリ活用やEC強化を推進。近鉄百貨店と提携し、都市型小型店舗「Style Factory」なども展開しています。全国約250店舗、年間10店前後を新規出店中。
DCMホールディングス
ホーマック、カーマ、ダイキなどを統合して形成された業界2位グループ。グループ店舗の「DCM」ブランド統一を進めつつ、粗利率の高いPB商品を強化。2024年には関東地盤のケーヨーを完全子会社化し、吸収合併。店舗数は843店。新規出店は年10〜15店程度に抑え、都市型小型店(プロ向け)も強化しています。
コメリ
全国最大の店舗数を誇るチェーン。地方の小型店「ハード&グリーン」を基盤に、大型店「パワー」やプロ向け専門店「PRO」を組み合わせたマルチフォーマット戦略を推進。農業資材や建築資材に強み。2023年度は27店舗を新規開店、店舗数は国内1,220店。地方深耕型の高速出店を継続中です。
コーナン商事
関西地盤。都市型大型店舗に加え、プロ向け小型店「コーナンPRO」を展開。ホームセンター以外のM&A(例:ホームインプルーブメントひろせ買収)も積極的に行い、全国展開を加速。プライベートブランド「コーナンオリジナル」でコスト競争力も強化しています。2023年度は売上・利益ともに増収増益を達成。
ナフコ
九州・中国地方地盤。ホームセンターと家具店を融合した大型業態が特徴。近年はPB商品拡充による価格競争力向上を図ったものの、節約志向の高まりや季節商材不振で苦戦。2023年度は売上5%減、営業利益44%減と減収減益。今後は改装と既存店活性化に注力する方針。
出店動向と地域戦略
業界全体として、新規出店による売上拡大が続いていますが、成熟市場におけるスクラップ&ビルドが進んでいます。
- カインズ:郊外中心に年間10店前後出店。
- DCM:M&Aにより店舗網拡大(ケーヨー買収)。
- コメリ:地方を中心に高速出店を継続。
- コーナン商事:関西を拠点に全国へ拡大、都市型プロ店舗も強化。
- ナフコ:九州中心にドミナント戦略を推進。
特に都市部では、プロ需要を取り込む小型専門業態(コメリPRO、コーナンPROなど)の展開が進んでいます。一方、過剰出店によるオーバーストア傾向もあり、不採算店の閉店・整理も進んでいます。
業績動向(2023年度実績)
企業名 | 売上高(億円) | 前年比 | 営業利益(億円) | 前年比 | 既存店売上前年比 |
---|---|---|---|---|---|
カインズ | 5,420 | +5.2% | 非公開 | – | 約▲1~2%推定 |
DCMホールディングス | 4,768 | +約9% | 287 | +15.8% | ▲数%推定 |
コーナン商事 | 4,727 | +7.7% | 240 | +9.4% | +約1%推定 |
コメリ | 3,707 | ▲2.3% | 220 | ▲15.2% | ▲1~2%推定 |
ナフコ | 1,921 | ▲5.0% | 51 | ▲44.0% | ▲4~5% |
- カインズ・コーナン商事が増収(コーナンは増益も達成)
- DCMはケーヨー統合効果で増収増益
- コメリ・ナフコは減収減益
- 各社とも既存店来客数は減少傾向、客単価上昇で売上を下支え
今後のカギは、新規出店だけに頼らない既存店の生産性向上と、プロ需要やリフォーム市場への対応力強化にあります。
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