バーゼル規制の最終化で何が変わる?~標準的手法編

バーゼル規制

バーゼル規制の最終化により、リスクアセットの算出方法が変更にあることで、銀行の営業戦略や融資審査、事務フロー等が変わることが想定されます。

その背景にあるリスクアセットの算出方法の主な変更点について、まずは標準的手法行に絞って説明します。

中堅中小企業向け債権(外部格付無格付)のリスクウェイトが低下

現行の規制では外部格付無格付先の法人については、リスクウェイトが100%になる。新規制では法人のうち売上高が50億円未満の取引先のリスクウェイトが85%になる。

標準的手法行は比較的規模の小さな地方銀行などであることが多い。地方銀行の取引先で売上高50億円を超える先というのは、地元の中核企業を除いてほぼないだろう。

そのため多くの標準的手法行で中小法人のリスクアセットが減少することが考えられる。

そのため営業戦略として中小法人の残高を伸ばす戦略を打ち出す銀行が増えるだろう。

株式のリスクアセットが増える

現行の株式のリスクウェイトは100%であるが、新規制では段階的にリスクウェイトが高まり、最終的にはリスクウェイト250%に上昇する。

多くの企業でガバナンスの観点から株式持ち合いを減らす方針を打ち出しているが、リスクアセットが増加するという点においても政策投資はさらに減少するだろう。

またファンド投資の裏付資産の株式についても同様にリスクウェイトが高まるため、投資信託や非市場性の投資についても、より採算性を求めることになるだろう。

当座貸越の与信枠にもリスクアセットがかかる

現行規制では例えば中小法人向けの当座貸越空枠1億円があった場合、リスクアセットはかかっていない。

しかし新規制では同様のケースでは1億円✕10%=10百万円についてリスクアセットがかかることになる。

そのため、使用実績が少ない当座貸越枠について、枠の閉鎖を促すような営業戦略を打ちだす可能性があるだろう。

なお、大企業が利用するような手数料を払い、空枠を確保するコミットメントラインについては現行でも新規制でもリスクアセットがかかっている。

住宅ローン、アパマンローン等の不動産担保付きのローンのリスクウェイトがLTV比率に応じたものに変わる。

現行規制では住宅ローンのリスクウェイトは35%であるが、新規制ではLTV比率に応じたものに変わる。LTV比率が最も良いゾーンであればリスクウェイトが20%となる一方、リスクウェイトが最も悪いゾーンであれば70%と現行よりも大きくリスクウェイトが高まる。

新規制によりLTV比率を意識した融資の審査が求められるだろう。

日本銀行資料

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