1. はじめに:スーツはもう売れない時代へ
もはやスーツは「毎日着るもの」ではなくなった。
リモートワークの定着、企業のドレスコード緩和、ファッションとしての変化──。
紳士服市場は、かつての「サラリーマン大量消費モデル」から大きく外れている。
その影響は、大手スーツ専業各社の決算に如実に現れている。
2. 紳士服大手4社の最新決算(2024年度)
企業名 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 備考 |
---|---|---|---|---|
青山商事 | 1,332億円(+5.4%) | 78億円(+233.7%) | 100億円(+235.8%) | オーダーと機能系スーツが牽引 |
コナカ | 622億円(▲5.4%) | ▲13.5億円 | ▲30.6億円 | 赤字体質が定着化 |
はるやまHD | 359億円(▲2.6%) | 5億円(▲46.1%) | 4.05億円(+64.2%) | 店舗統廃合で利益確保 |
オンワードHD | 2,084億円(+9.9%) | 102億円(▲9.8%) | 85億円(+28.8%) | OMO戦略と女性向けが主力 |
3. スーツ離れの背景:カジュアル化と人口減少
- スーツは「必需品」から「選択肢」に変化
かつてのスーツ需要を支えていた30~50代の生産年齢男性が減少する中、
ビジネスウェアのカジュアル化が止まらない。
“ジャケパン”や“ノータイスタイル”が定着し、スーツ着用日数は激減している。
4. 各社のカジュアル対応策と現状
企業 | カジュアル施策 | 備考 |
---|---|---|
青山商事 | 「ゼロプレッシャースーツ」展開、オーダー拡大 | カジュアル化と個別化の両面対応 |
コナカ | パターンオーダー強化 | カジュアル対応はやや遅れ気味 |
はるやま | ワークスタイル提案型店舗増 | 小型店中心に展開見直し中 |
オンワード | カジュアルアパレル主体に | もはやスーツ専業ではない |
5. ユニクロという“キング”の脅威
最大の脅威は、価格と品質の両立を実現するユニクロの存在だ。
- 「感動ジャケット」「感動パンツ」シリーズは、ビジネスにも通用する完成度
- 価格は上下合わせても1万円台前半
- 各地に展開する大型店・ECでの手軽な購入体験
この“巨大ブランド”がスーツ市場の周縁をすでに食い始めており、
中途半端なスーツ専業ブランドでは太刀打ちできない。
6. まとめ:スーツ専業の時代は終わるのか
生産年齢人口の減少、着用シーンの減少、巨人ブランドの圧倒的存在感──。
スーツは今、縮小均衡の中で生き残りをかけた変革を迫られている。
大手4社はオーダーや機能性、ライフスタイル提案で違いを出そうとしているが、
市場全体の構造的な縮小と“ユニクロ化”の波に抗えるかは未知数だ。
いまやスーツは「売るだけの商材」ではなく、
「どう着るかを提案する商品」へと再定義されなければ、生き残れない。
コメント