「ゲームで稼ぐ」のではなく、「投資で稼ぐ」ゲーム会社がある。
その代表格が、コーエーテクモホールディングスだ。そして、その裏で巨大な資産を運用し続けるのが“女帝”こと襟川恵子会長である。
投資益で経常利益を押し上げる異色のゲーム会社
2022年3月期、コーエーテクモは株式売却益だけで約141億円を計上した。これは経常利益の半分近くを占める異常な比率で、通常のゲーム会社では見られない構造だ。
ゲーム開発は当たり外れが激しい世界。そんな中、資産運用による安定収益を確保することで、同社は強固な財務体質を維持している。
約1,200億円の資産を動かす“投資家経営者”
襟川恵子氏は、創業家出身のオーナー経営者でありながら、プロの投資家顔負けの運用手腕を持つ。株式、債券、デリバティブなど多様な資産に分散投資を行い、短期売買に走らず、長期的な視点で堅実に利益を積み上げてきた。
その投資センスは、彼女の「リスクを見極め、価値を見抜く」眼力に裏打ちされており、コーエーテクモという企業自体がその延長線上にあるともいえる。
投資の専門子会社まで設立
2025年4月、同社は「コーエーテクモ・コーポレートファイナンス株式会社」という投資専門子会社を設立。襟川氏自身が社長を務め、グループの資産運用をより効率的かつ専門的に行う体制を整えた。
これは、投資によって得たキャッシュを単なる余剰資金として寝かせず、企業の競争力強化に繋げようとする戦略的な一手だ。
投資が本業を支える――ゲームと資産運用の二本柱
「信長の野望」「三國志」「無双シリーズ」「仁王」「アトリエシリーズ」「ネオロマンス」など、コーエーテクモは長年にわたり人気タイトルを生み出してきた。
とはいえ、ヒット作の陰で不発に終わるタイトルも少なくない。そうしたリスクを軽減する意味でも、資産運用からの安定収入は本業の“保険”として機能している。
まとめ:創業家だからこそできる、投資と経営の融合
今やゲーム会社は、「ヒット商品」だけでは生き残れない時代。人件費の高騰、開発費の増加、為替の影響――経営リスクは増える一方だ。
そんな中で襟川恵子氏が実践する「資産運用経営」は、創業家の長期視点とオーナー経営者の胆力があってこそ実現できるモデルだ。
ゲーム業界において、コーエーテクモは“投資で稼ぐ”異色の存在だが、それが同社の持続的な強さの源であることは間違いない。
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