1. リカバリーウェア市場が今、異常に膨張している
近年、リカバリーウェアを名乗る商品が市場にあふれている。
「着るだけで疲労回復」「寝ている間にリカバリー」──。
聞こえのいい謳い文句を並べるブランドが次々と登場し、百花繚乱どころか玉石混交の状態だ。
新興ブランドだけでなく、アパレル、スポーツメーカー、果ては医療・ヘルスケア分野からも参入が相次ぎ、
消費者の混乱は深まるばかりだ。
だが、冷静に見るとこの市場には重大な問題がある。
そして、巨大企業が本格参戦すれば、この乱立市場は一瞬で吹き飛ぶ可能性が高い。
2. リカバリーウェアの起源と市場拡大の歴史
リカバリーウェアという概念が日本に広まったのは、2010年代初頭。
パイオニアとされるのは、**ベネクス(VENEX)**などのブランドだ。
当時、
- 特殊繊維による血流改善効果
- 自律神経バランスへの影響
- 睡眠の質向上
といった効果が科学的エビデンス(※ただし限定的)とともに紹介され、一部のスポーツ選手や健康志向層に受け入れられた。
その後、健康ブーム、睡眠ブームと重なり、
2020年代に入り一気に「リカバリー」という言葉が一般市場に浸透。
今ではリカバリーウェア市場規模は数百億円規模に達していると推定される。
3. なぜ今、リカバリーウェアが乱立しているのか
背景には大きく3つの理由がある:
- ①健康ブームの加速
コロナ禍以降、健康・ウェルネス市場が急拡大し、
睡眠改善・ストレス軽減を訴求する商品の需要が爆発した。 - ②技術的な参入障壁の低さ
リカバリーウェアに使われる繊維技術(遠赤外線放出、鉱物含有素材など)は、
特許切れや模倣が容易なため、後発ブランドでも技術的には参入できる。 - ③高単価が取れる”夢商売”
通常のパジャマよりも数倍高い価格設定ができるため、
中小メーカーにとっては「割のいい商売」になりやすい。
結果、ブランド数は爆発的に増加したが、
本当に効果があるかどうかは玉石混交となっている。
4. 市場の実態:品質差とブランド商売
リカバリーウェア市場には、次のような実態がある:
- 高価な商品でも効果に科学的裏付けが乏しいものが多い
- 同じような繊維スペックで価格差が5倍以上
- 「医師監修」「特許取得」などのラベル商売が横行
つまり、リカバリーウェアは**「機能の差」ではなく、「ブランドのイメージ」で高値が付けられている**市場なのだ。
この状況が続けば、消費者の不信感は高まり、
「なんだ、リカバリーウェアって結局ただの高いパジャマじゃないか」という認識が広まるのは時間の問題だ。
【有名リカバリーウェアブランド一覧】
ブランド名 | 特徴・強み | 備考 |
---|---|---|
VENEX(ベネクス) | リカバリーウェアの草分け。特殊繊維「PHT(Platinum Harmonized Technology)」使用 | 日本国内シェア最大級。医療関係者との共同研究も |
リフランス(RefrancE) | 日本製の天然鉱石練り込み繊維。睡眠・休息特化 | 伊藤忠商事系ブランド。百貨店でも展開 |
BAKUNE(バクネ)(TENTIAL) | 睡眠時特化型リカバリーウェア。遠赤外線効果をうたう | スタートアップ発。若年層ターゲットが中心 |
ミズノ リカバリーウェア | スポーツブランド発。筋肉疲労回復をターゲット | 大手スポーツメーカーならではの信頼性 |
アンダーアーマー RECOVERYシリーズ | 海外発、赤外線反射素材「Mineral-lined fabric」を使用 | アスリート向けに開発 |
ワコール RECOVERY SLEEP | 女性向けに特化したリカバリーウェア | 睡眠科学研究所のデータに基づく設計 |
CW-X(シーダブリューエックス)RECOVERYシリーズ | コンプレッションウェアの流れから派生 | もともとスポーツリカバリー専門ブランド |
テクノジェル スリープウェア | イタリア発、冷却・リラックス効果重視 | リカバリーウェアというより睡眠補助寄り |
ワークマン MOVE ACTIVEリカバリー(噂レベル) | リカバリー機能付きウェア開発中との噂あり | 低価格で市場破壊の可能性 |
5. ユニクロのような「巨人」が参戦すれば市場は壊滅する
もしここに、ユニクロのような大手企業が本気で参入したらどうなるか?
- 世界最先端の繊維技術(エアリズム、ヒートテック)をベースに
- 数千円台の低価格帯で
- 大量生産による品質の安定性を武器に
- 派手な広告ではなく「確かな機能性」で勝負する
──そうなれば、
いま市場にあふれている高額・中小ブランドの多くはひとたまりもない。
現に、ユニクロは過去にも
- 「ヒートテック」で冬用インナー市場を一掃
- 「エアリズム」で夏用インナー市場を席巻
してきた。
同じことがリカバリーウェア市場でも起きるのは、ほぼ間違いない。
「リカバリー機能付きパジャマ」という新ジャンルをユニクロが作れば、
今のプレイヤーたちは軒並み駆逐されるだろう。
6. まとめ:リカバリーウェアの未来はどうなるか
リカバリーウェア市場は、今はバブルのような盛り上がりを見せている。
だが、その多くはブランドイメージと「効果を信じたい」という消費者心理に乗っかったものに過ぎない。
本物の技術力と価格破壊を武器にした巨人(ユニクロやワークマン)が本気で乗り込んでくれば、
この市場の大半は吹き飛ぶだろう。
リカバリーウェアの未来は、
- 「本当に科学的根拠のある商品だけが生き残る」か、
- 「一過性ブームとして終わる」か、
のどちらかである。
今の”玉石混交”状態は、そう長くは続かない。
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