2025年4月26日、阪急阪神ホールディングスの元会長であり、関西経済界の重鎮として知られた角和夫(すみ かずお)氏が76歳で逝去されました。訃報は5月7日に公表され、多くの関係者に惜しまれながらその生涯を終えました。
■ 阪急と阪神の統合を実現した辣腕
角氏の最大の功績の一つは、阪急電鉄と阪神電気鉄道という、関西を代表する二大私鉄の経営統合を2006年に成し遂げたことです。両社は100年を超えるライバル関係にあり、その統合は一筋縄ではいきませんでした。しかし角氏は、粘り強い交渉とビジョンを持ってこれをまとめ上げ、阪急阪神ホールディングスという新たな企業体を誕生させました。
この統合は、鉄道事業だけでなく、百貨店やホテル、不動産、エンターテインメントにまたがる事業ポートフォリオの強化につながり、関西経済の競争力を高める原動力となりました。
■ 阪神タイガースの再建と2023年の優勝
経営統合後、阪神タイガースの球団経営にも積極的に関与。角氏は岡田彰布監督を招聘し、チームの強化を図りました。その結果、阪神タイガースは2023年にセ・リーグ優勝を果たし、18年ぶりの栄冠を手にしました。この優勝は、角氏の経営手腕と岡田監督の采配が結実した成果といえるでしょう。
■ 梅田駅周辺再開発の推進
角氏の功績は都市開発にも及びます。大阪・梅田エリアでは阪急百貨店本店ビルの建て替えや、グランフロント大阪の開発など、複数の大規模再開発を推進しました。これにより梅田は関西随一のビジネス・商業エリアとしての地位を確立し、街のにぎわい創出にも大きく貢献しました。
■ 関西経済界の重鎮として
角氏は関西経済連合会の副会長なども務め、関西財界のリーダーとして存在感を発揮しました。企業間の連携や地域経済政策の推進など、広域的な視野で関西の発展に尽力した姿勢は、多くの経済人から高く評価されています。
■ 長期政権の影 ― 宝塚歌劇団の不祥事
一方で、角氏の長期政権には影の部分も存在しました。2023年、宝塚歌劇団で若手俳優が上級生からのパワーハラスメントを受け、命を絶つ事件が発生。角氏はこの問題について遺族に謝罪しましたが、組織内のガバナンス不全や閉鎖的な文化が問われる事態となりました。
この事件は、華やかなイメージの裏側にある構造的課題を世に知らしめ、宝塚歌劇団ひいては阪急阪神グループ全体の体質改善が求められる契機ともなりました。長期政権がもたらす硬直化や、トップダウン経営の限界を象徴する一件だったともいえるでしょう。
■ まとめ ― 功績と課題の両面から見る角和夫氏
角和夫氏は、阪急阪神の統合という「歴史的和解」を実現し、鉄道・流通・不動産・エンタメを統合した多角経営モデルを作り上げた名経営者でした。阪神タイガースの復活や梅田の再開発といった実績も、関西の街や人々の暮らしに確かな影響を残しました。
その一方で、長期政権に伴うガバナンスの課題、宝塚歌劇団の不祥事など、改革が十分に及ばなかった側面も否定できません。
角氏の逝去に際し、功績を称えると同時に、課題から学びを得ることが今後の関西経済界、阪急阪神ホールディングスにとって重要ではないでしょうか。
― ご冥福をお祈りいたします。
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