2025年4-6月期、ホンダの営業利益は前年同期比▲50%という衝撃的な減益決算となりました。主因は、米国による自動車関税の引き上げ。それでもホンダは通期営業利益を上方修正してきました──その背景には「為替」「交渉力」「北米生産体制の見直し」という冷静な打ち手が見えてきます。
第1四半期決算の要点
- 売上高:5兆4000億円(+7.2%)
- 営業利益:2442億円(▲49.8%)
- 純利益:1630億円(▲33.7%)
- 為替レート:1ドル=140円(円安効果)
- 米国関税コスト:▲1250億円の営業利益圧迫
アナリスト予想(約3100億円)を大幅に下回り、市場は一時ネガティブ反応を示しました。
追加関税:最大の逆風
- 米国は2025年4月から、日本車に25%の追加関税を課しました。
- 対象は完成車の輸出分で、ホンダの国内生産→北米輸出モデル(例:アコード、CR-V)が直撃。
- 北米製造比率は高まっているものの、完全なカバーはできておらず、第1四半期では1250億円のコストが発生。
通期で“増益見通し”に転じた理由
こうした逆風にもかかわらず、ホンダは通期営業利益見通しを5000億円→7000億円へ大幅上方修正しました。その背景には以下の3つの理由があります。
✅ 為替の見直し
想定レートを1ドル=130円→140円に変更。ドル建ての売上が円換算で膨らみ、利益を押し上げました。
✅ 通商合意の進展
7月に成立した日米の新通商合意により、9月以降には関税率が段階的に15%まで引き下げられる見込みです。下期からの改善を織り込んでいます。
✅ 北米現地生産の加速
ホンダはカナダやメキシコにおけるEV・HVの現地生産投資を強化しており、関税回避の布石を打っています。
アナリストが注目するポイント
要素 | ポジティブ材料 | リスク材料 |
---|---|---|
米関税 | 年後半に減免見込み | 合意の発効遅延・再交渉リスク |
為替 | 円安が業績を支援 | 為替介入や円高リスク |
EV投資 | 北米現地生産の強化 | 初期費用が重く短期的収益を圧迫 |
通期ガイダンス | 上方修正で株価支援 | Q1の弱さが心理的ブレーキに |
今後の注目点
- 関税削減が9月に予定通り適用されるか(議会承認が焦点)
- 北米新工場の稼働スケジュール(カナダEV工場は2026年本格稼働予定)
- EV部門の採算性(Q1だけで1130億円の一時費用を計上)
- 米国市場への依存度の高さ(2024年度:37%、今期は40%超)
結論:ホンダの構造転換は“道半ば”
決算単体では「減益・失望」の文字が並びましたが、通期で見れば為替と通商政策の好転を織り込む形で再加速の布石が打たれています。とはいえ、貿易摩擦と地政学リスクは依然として高く、決して楽観はできません。
ホンダの構造転換、特に「グローバル×EV時代」における競争優位性の確立は、今まさに問われています。
🧭一言まとめ
「関税で揺れたホンダ、為替と地政を読み切れるか──真の勝負はこれから」
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