銀行の中途採用はなぜ辞めてしまう

キャリア

近年は新卒採用により入行した若手も離職が増えているようですが、せっかく中途採用で銀行に入行したにもかかわらず、辞めてしまう人が多いのではないでしょうか。


銀行で働いていると、銀行の辛さがよくわかるので、異業種から銀行にわざわざ転職してくるなんて信じられませんが、メガバンク等の大手銀行や一部の優良地方銀行は異業種と比較して給与も高く、福利厚生もしっかりしているからと考えられます。

私が銀行の支店で働いていた時も本部で働いていた時も、多くの中途採用で入行した方の退職をみてきました。

そこで、中途採用社の退職理由を推測してみます。



銀行業界は、プロパー意識が強いから

銀行業界には新卒一括採用や年功序列など、日本型雇用の文化が根強く残っています。

近年では、デジタル化やソリューションの高度化に対応するために、銀行業界以外からスペシャリストを採用するケースも増えてきているようですが、大手銀行で中途採用から頭取になった人はいないのではないでしょうか。また、人事に権限を持つ所属長(部長、支店長など)はやはりプロパー社員が多いです。

中途採用者はプロパー社員からみれば、「外様」という見方が根強く、あからさまなものはなくても、プロパー社員への優遇はあるのではないでしょうか。

同期というのはその最たる例であり、他にも趣味仲間や飲み仲間といったものがあります。人が組織に適応するための第一ステップは「受容感」です。

「受け入れられている」という感覚が、会社へのコミットメントを生み、貢献したいという欲求へと変化。メンバーとのコミュニケーションの増加へとつながり、業務に必要なノウハウや知識にアクセスできるようになります。

ここでようやく「この会社でやっていけそうだ」という確信を持つことができ、「有能感」というステップに到達するのです。早期離職する中途社員の多くは、部外者のまま受容感を持てずに時間だけが過ぎ、有能感に到達しないため、会社に貢献しようというモチベーションを感じることなく離職してしまうわけです。

ルールが複雑で細かい、しかも銀行それぞれで違う

銀行はお金を扱うこともあり、多くの書類仕事が多いです。しかも書類のミスは許されず、申込書等への訂正印を求められるなど、他の業界ではあまりない細かさです。

また、支店にいると投資信託の販売や保険の販売をすることもありますが、ミスが金融商品取引法などの法令違反につながることもあり、リスクもある仕事です。

そんなリスクもあり、正確さが求められる中で、多くの事務ルールを覚えるのは難しく、若手のプロパー社員であれば面倒を見てもてもらえますが、即戦力とみなされる中途採用者はそんなことはあまりありません。

採用基準が現状にあっていないというミスマッチ

自社の仕事や社風に求職者の能力、性格、価値観が合っているかという観点で採用基準を作り、採用活動の礎となるものです。しかしその基準が間違っている、あるいは面接精度が低い、選考手法がそぐわないといったように根本が間違っていると、いわゆるミスマッチが起きてしまいます。

入社前の期待、理想が高すぎるがゆえに生じる、現実に接したときのギャップがリアリティショックと呼ばれるものです。リアリティショックを経験すると離職率が高まるというのは、古くから研究によって明らかにされています。本来はミスマッチではないけれど、理想と現実のギャップがあまりにも大きすぎることによって、会社に対する不信感を生み、定着の阻害となってしまうのです。

まとめ

上記の通り離職者が増えている銀行において、プロパー社員以上に生き残るのが難しいのが中途採用者になります。

しかし、中途採用者でもIT、デジタルや高度なソリューション提供など高い専門性を持っていることや、上司や同僚とコミュニケーションを図り、関係性を構築できれば能力を発揮すればハードルのある銀行でも生き残ることができるでしょう。

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