JR東海が推進するリニア中央新幹線。
総投資額は東京~大阪間で9兆円超とされ、民間企業単独としては日本史上最大級のプロジェクトです。
しかし、リニアは果たして「未来の稼ぎ頭」となるのでしょうか。
結論から言えば、リニアはJR東海の財務を圧迫する「終わった事業」になりつつあります。
この記事では、東京~大阪開業を前提に、JR東海の経営と収益性の観点からリニアの問題点を整理します。
■ 東海道新幹線 ― すでに完成された「超優良インフラ」
まず確認しておきたいのは、JR東海の現在の収益構造です。
- 営業収益の約9割が東海道新幹線
- コロナ禍を除けば毎年安定して営業利益5000億円規模
- 固定費の高さを上回る利用者数と高単価で、抜群の収益性
つまり、東海道新幹線だけで十分に会社が成立している状況。
現行設備のメンテナンスや更新に投資するだけでも高収益体質が維持可能です。
■ リニアは「新たな需要」を作れない
リニア推進派は「航空機からの移転」「新たな需要の創出」を謳いますが、現実は厳しい。
- ウェブ会議の普及でビジネス需要は減少傾向
- 日本の人口は2050年には1億人割れ、さらに生産年齢人口は急減
- 東京~名古屋の航空便はすでに需要が限定的(乗り換え需要も少ない)
「東京~大阪1時間」「東京~名古屋40分」と言われても、そもそも移動自体の絶対数が減るのです。
新幹線も今後利用者が減る可能性がある中、二重系にすることでむしろ既存の東海道新幹線の利用者を奪い合う構造になります。
■ 建設費9兆円、返済に見合うキャッシュフローは出せるのか
リニアの建設費は東京~名古屋で約7兆円、名古屋~大阪まで含めると9兆円超。
この巨額の借入金(政府からの財投資金3兆円含む)を、
リニア単独で返済できるシミュレーションは極めて困難です。
仮に運賃を東海道新幹線より3割高く設定しても、需要が縮小する中では、
既存の東海道新幹線の利用者をリニアにスライドさせるだけで、
グループ全体の輸送収入は大きく増えない可能性が高い。
さらに維持費、減価償却、金利負担も重くのしかかります。
■ 二重系のメリットは「保険」でしかない
リニアが唯一意味を持つのは「東海道新幹線の代替機能」として。
万一、南海トラフ地震などで既存インフラが長期停止した場合に、
「リニアがあって良かった」と言えるかもしれません。
しかし、それは**「収益のための路線」ではなく「リスクヘッジのための路線」**。
保険として9兆円かける価値があるか?
その答えは極めて疑問です。
■ 経営リスク ― 財務の健全性を揺るがす「未来の重荷」
現在、JR東海は有利子負債を一時的に増やしつつも、
リニア事業以外では健全な財務体質を保っています。
しかし、リニアが完成し営業を始めても、
返済に必要なだけのキャッシュフローが生まれなければ、
グループ全体の資金繰りを圧迫する未来が待っています。
JR東海の現経営陣は「短期的な東海道新幹線頼み」の収益構造にリスクを感じてリニアを推進しましたが、
結果的により大きなリスクを背負い込む選択になった可能性が高いのです。
■ まとめ:リニアは「東海道新幹線の収益性の高さ」を逆に侵食する
東海道新幹線は「超優良事業」です。
一方で、リニアは「同じルートの二重化」「需要が伸びない市場」「借金返済の困難性」という問題を抱えています。
唯一のメリットは「災害リスク分散」という「保険」にとどまり、
収益事業としては既に成立しないとみるのが妥当です。
この「保険」のために9兆円の借金を抱える――
リニア中央新幹線は、日本が「インフラを維持するだけで精一杯」になる人口減少社会において、時代遅れの巨大事業になりつつあります。
JR東海の未来は、果たしてどこに向かうのか。
今後の経営判断から、目が離せません。
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